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笑顔の果てに

少し間が開いたが、[3月のライオンChapt.20(単行本01巻・白泉社特集page)]を読了した(本文ではネタバレにご注意の程を)。

松永七段戦から時は過ぎ、Xmas間近となった。
先に零君宅を訪れた際の忘れ物回収を口実に電話を掛け、零君と再会する香子嬢。
仕込みではなかったにせよ、早々に思い出し『Xmas間近迄見付からず、いざとなったら直ぐ発見してくれる様に』と十字でも切りつつ念じる香子嬢の姿は、想像するだに萌える微笑ましい。
(二海堂君にせよ松永先生にせよ)押しの一手の相手に弱い零君が02人きりで話せる隅田川岸での再会に甘んじると、

良かった もらったばかりなのよ 後藤に(P.62 02齣目依り引用)

義理立て宜しく語りつつ、取り戻した時計を付ける香子嬢。

何で アンタんちじゃ だめなのよ(P.63 01齣目依り引用)

と切り込み、言い淀む零君が嘗て馬乗りにされた折の光景を思い起こした所で、

……… 今何考えたか当ててあげようか 零(03齣目依り引用)

氷の微笑を湛えつつ、戦火を拡大する。
とても再会に和む義姉弟の雰囲気ではなく、同棲中の後藤氏に見られたらDVに曝されるとした物だが、零君への妥協を逆手に火遊びを楽しんでいる風情だ。
Chapt.19で道化に甘んじた影は微塵も感じさせず、頼もしささえ抱いた。

年末の幸田家帰省に就いて確認し、対局や勉強を口実に拒絶された所で12/24のC01順位戦VS安井棋士が本年最後だと指摘して論破し、

あっ そうそう 安井さんと 言えば ついに離婚 決まったらしいわねぇ(P.64 02-03齣目依り引用)

又も対戦相手の事情から、責め立てて来る。
松永先生戦の時は、「現状の地位から蹴落とす」という勝負に特化した事情の上に零君への気遣いも装っていたが、今回は入念な調査の基に安井家の家庭崩壊と娘の境遇に触れて、

でもねえ 娘さんが 言ったんだって 「クリスマスまでは パパと一緒にいたい」 って(P.65 02齣目依り引用)

ガジガジ流さながらの食らい付きを見せた。
ここ迄来ると愛憎半ばにせよ思いやりを見出すには難しく、零君も

ああ… 嫌だ たまらなく 嫌だ
この べったりと はりつくような 義姉のもの言いが(P.65 02齣目-66 01齣目依り引用)

心中で呟いている。

棋士の離婚率の高さと、離婚に至る期間の短さは一般社会に比して尋常でなく、峻厳な勝負師と穏和な家庭人との切り替えの困難を思わされた。
私が「今期(第67期)C級01組で対戦する相手の内、離婚経験者は何人おいでだろうか・・・」と指を繰ったかはともあれ(微苦笑)、相変わらず過酷なthemeを採り上げると感嘆させられる。
幸田先生同様、「勝負の為に家族を切り捨てる」という単純明快な描き方ではないし、その分読者たる私も腸に鉛を埋め込まれたと思しき重さを味わえる。
安井棋士の場合は、「普段は気弱だが負けると酒に暴力に賭博の乱行」との由で、「盤上で剛毅を振るい、勝った勢いで遊興三昧」とは行かなかった点は、松永先生同様と言える。
松永先生は家庭で辛うじて勝負の鬼としての矜持を保ったが、幸田先生の場合は盤上でも家庭でも同様の上にtournament pro兼師匠としてもそうだった点が、家庭崩壊に繋がった。
香子嬢も自分に直帰する家庭問題を良くしゃあしゃあと語った物だが、安井嬢に対しては『私みたいにしぶとく生きればいいのに』と上から目線になっていそうだ。
息子も儲けて母共々すっかり図太くなった松永嬢を知った時、『私もこうなれれば良かったのに』と羨望を抱くかはともあれ。

嫌々をして見せた零君だが、

何より こんな 毒をはらんだ 言葉ですら
聴いていたいと 思う自分が(P.65 02-03齣目依り引用)

随分自分に、正直になっている。
義姉の身も蓋もない言い草に、感化されたかも知れない。
寧ろ零君自身の為になるだろうし、「ご馳走様」と呟きそうになった。

いよいよ好調となり、萎縮する零君の身嗜みを整えてやりつつ間合いを詰める香子嬢。
「幸田~後ろ後ろ~!」と【8時だョ!全員集合】宜しく騒ぎ立てたくなるが(公開収録は我が故郷・茨城県取手市の【取手市民福祉会館】も歴訪している)いよいよ辛辣に、

ああ… でも そうね
あなたは 違ったっけ
自分で親をえらんだんだものね 他人(註:『私』と付記)の家の 父親をね(P.67 01-03齣目依り引用)

妖艶に囁き掛ける。
幸田先生が零君の意思表示に関して、『桐山家葬儀の折に、棋士を目指すなら家に置いてやると謎掛けして正解したんだ』等と説明する筈もないが、そこは零君が『僕が将棋を続けたいから置いて下さいって、お願いしたんです』とでも代弁した訳だろう。
零君も回想modeを発動させ、幸田家でのXmasを思い起こす。
我乍らお待ち兼ねで「桐山屋!」と囃したくなる物の、今回は鬱系か懐かし系か微妙だ。

-一家団欒の中で、香子と義弟?の歩共々presentの箱を開ける。
香子は自分の背丈程もある熊のぬいぐるみを真っ赤に立腹して叩き、歩は小型game機に目を輝かせる。
零君が紐解いた包みからは、高級感漂う桐箱に収まった盛り上げ駒?が現れ、部屋の空気が一変する。
自分との格差を悟る香子と歩を余所に感謝に打ち震える零君。
幸田先生はお為ごかしと言うより天然じみた面持ちで、

どうだ? れい おもちゃとかの方が 良かったかな?(P.69 04駒目依り引用)

優しげに語り掛ける。
幸田先生の贈り物は、gameの世界に呑み込まれた歩を含めて悉く子供達を幸福にしなかった事になる。
零君は今更将棋との野合に思いは馳せず、

いえ… ありがとう ございます すっごく 嬉しいです(P.70 01駒目依り引用)

感謝を述べた-

回想から復帰した零君は、義姉弟を傷付けた自分の無配慮を後悔しつつ、義父の厚情に今尚感謝している風情になった。
感謝や自省・悔恨と無縁の香子嬢は囁きの手応えを噛みしめる様に、

勝って帰って来たパパと 負けて帰って来たパパ
さあ… 最後のクリスマスの 思い出に ピッタリなのは どちらかしら?(P.70 05齣・P.71 01齣依り引用)

小悪魔の笑顔で締めて、暫しの別れとなった。

対局当日に高校へ寄って終業式を済ませ、担任の林田先生から通知表を渡される零君。
林田先生は孤独を持て余した風情で教え子たる02-B組生徒のXmas会を教え、『夕方だから間に合わないだろう』とは明言しない物の自分と合流する様に誘い掛ける。
零君は川本03姉妹との交流を話していない様だが、侘びしさを振り撒く林田先生を無視して千駄ヶ谷に急行しつつ、

いつ頃からだろう クリスマスを苦しいと 思うようになったのは ある時 ふと 思ったのだ 「通知表みたいだ」と… ---その一年間の---(P.70 03-05齣目依り引用)

年越しも立派な通知表なり終業式だが、現在の棋界は棋戦の減少及びsystems変更で、大晦日迄の対局は行われていない。
零君に取っては、出席しても馴染めなかっただろう子供会等でのXmasが印象深いかも知れない。
人間関係に特化した一年の総決算は、如何にも辛辣な視点だ。
自滅覚悟で超早指しでもしてXmas会に合流する誘惑に駆られるかはともあれ、今度こそ生活を懸けた順位戦を凄惨に彩る死闘が展開されるだろうか・・・(09/29 12:00記載)

昨日-「△(指し掛け)leftright」。拙宅でVS石井直樹三段。朝知ったばかりの恩師たる中原先生の休場・翌日の不戦敗を伝えた後で対局となり、内容も結果もまあまあとなる。
本日-「○(勝利)upwardright」。午後から打ち合わせ。詳細はもう暫く秘匿させて頂きたい。

こよいは、ここまでにいたしとうございます(by【大井夫人@武田信玄】終話挨拶依り)。

追記
「夫人の不貞行為が安井棋士を乱行に走らせた一因で、夫婦とも清々している。娘は零君の駒同様に数十万円のpresentを貰うので義理立てしたに過ぎず、とっくに愛想が尽きている」といった設定でも今更驚きはしないが、流石に松永先生の時同様にさっぱりした気分には、なれないだろう。

又しても本誌の懸賞に当選!!(拳闘暗黒伝セスタスTC)。物が小さいのでささやかに当選の舞を捧げる。300P300円の漫画雑誌だけに[近代将棋]本誌の末期が脳裏を過ぎるが、買い支えという言葉もある。

【「ナイスポ」活動停止…東京国税局が商標権差し押え(ZAKZAK 09/12)】

同社(註:ナイタイ出版)が数億円の税金を滞納していることで、東京国税局は11日、同社が現在使用中のナイスポなど全ての商標権を差し押さえるという異例の処分を下した。

如何に出版界全体がお寒い有様にせよ、掛かる事態にはそうそう遭遇しないであろう(読経合掌)。

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コメント

 確かに、川本家と幸田家という、絵柄からして対照的な2つの世界の間に、零(=zero)くんは座標軸の原点のように存在していますね。その間の均衡が崩れる時(chapter 21では零君の内面で壊れたわけですが、もっと登場人物全体にかかわって)、どんなストーリーが生まれるのかは、興味深いところです。

お返事が遅くなりました。

被贈呈物=天賦の才という発想はありませんでした。零君が誰に何を贈るかは重要なthemeになりそうですが、(Chapt.04「橋の向こう」扉でのice candyを除けば)松永先生に差し上げたうなぎ丼定食&酒類が初ですので、松永先生が二海堂君並に特殊な存在だと思わされます。

香子嬢は生々しい人間性が活写されている様に思います。今回の発言こそ露骨ですが、零君への感情はそれこそ複雑怪奇に描き込まれて欲しいです。零君の対局前以外で、今後どう将棋と絡めるかも興味深いです。
片やあかり嬢は零君に対してもご指摘通り贈ってばかりで、掲載誌に相応しい?青年向けご都合主義から未だ乖離していない様です。消息不明な父親のflagが発動するか、香子嬢がご自慢の情報収集能力で零君との交流を突き止めて干渉した時、彼女の真の魅力が示されるにせよ・・・

 こうなってみると、「遠雷」は、3章を通してあくまで「遠雷」だったようですね。「贈られたもの」というと、やはりgiftという単語、天賦の(英語でいえばgiven)才能という意味もあるあの概念が浮かびますが、零くんがgiftを贈られ、そしてまた自らの内に発見する、という筋は、自然な展開として予想されます。
 
 棋士の離婚、という微妙な問題を出してくると、やはり羽海野さんは「踏み込んで」きているな、と感じますし、「3月のライオン」と「ハチワンダイバー」と比較したときに、いまのところプロ棋士の方々が素直に感情移入しやすいのが後者であるのは、後者における盤面リアリズム追求によるものだけではないのだろうな、とも想像することになります。柴田ヨクサル氏が羽生善治氏(当時二冠、現四冠)と楽しげに会話していらっしゃる場面を、今年の名人戦前夜祭現地で拝見しましたが、プロ棋士の離婚問題につき羽海野さんに率直に語れるプロ棋士は、もしかしたら先崎八段や窪田六段くらいなのかもしれません。私自身も、下世話な関心と全く無縁とはいえませんが、将棋というゲームの本性的(giftな)性格と結びつけて、プロ棋士の家族問題のありようがとらえられる展開を期待します。それが、迂回的なようで、将棋という大海にいつか届く川の一つとも思います。

 香子嬢は相変わらず美しいですね。特に、母性gift全開の女性たちが主役といっていい「ヤングアニマル」誌の多くの他作品(Detroit Metal Cityにさえ、その範疇の女性が登場)と較べた場合、やはり異彩[才]を放ち、新鮮この上ありません。
 窪田六段の香子嬢への愛憎入り交じった(?)ご発言を拝見して、六段と同年齢(「ジャンプ世代」、と呼ばせていただいてよいでしょうか)の同僚の、『きまぐれ☆オレンジロード』への愛憎的な・ambivalentな発言を想起しました(「あのマンガは本当に苛々させられるよなあ」、と未だ現在形で生々しく語っていたかと思います。)。私自身は、岡崎「京子」さんの諸作品の女性像や、あるいはよしながふみさんのそれへの連想とともに、羽海野作品における新たなる積極性も見るところです。

 失礼します。

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