web顕微鏡で素粒子観測
【朝日新聞(asahi.com)】夕刊に掲載されているcolumn【素粒子(asahi.com 論説委員室)】06/18付が、昨今話題を呼んでいる。
永世名人
羽生新名人(中略)またの名、将棋の神様。
永世死刑執行人
鳩山法相。「自信と責任」に胸を張り、2ヶ月連続でゴーサイン出して新記録達成。またの名、死に神。
永世官製談合人
品川局長(中略)またの名、国民軽侮の疫病神。
との内容で、私もやや扇情的かと思っていた素粒子のimageが上塗りされたと感じる。
在野からは、素粒子を批判しつつ鳩山邦夫(くにお)法相を擁護する声が良く響いている印象がある。
とは言え、羽生善治(よしはる)三冠(19世名人)を庇いつつ素粒子惹いては朝日新聞を批判する声は、一連の報道を含めて余り聞こえて来ない。
先に名人戦問題かまびすしい折、「アサヒル(名詞+るは響きが悪く好きになれない)=02→強奪・庇を借りて母屋を取る事」旨の叩きが出現しなかった点と併せて、将棋界への低関心度を浮き彫りにしているかも知れないる。
【法相、朝日新聞夕刊コラムを批判 「死に神」表現で(asahi.com 06/20)】
との報道にもある様に、
「大変な問題だ。そういう軽率な文章を平気で載せるということ自体が、世の中を悪くしている」と批判
当の鳩山法相は噛み付かんばかりの猛烈さで反論している。
羽生三冠はともあれ、福田政権では露骨に「官邸主導・官僚既得権排除」を謳っている訳ではないので、国土交通省北海道開発局・品川守北海道局長へも何が弁護があってもいい様な物だ。
失言連発で臑に傷を持つ身だけに、巻き添えを恐れた物かも知れない。
【連続幼女誘拐殺人:「死に神」報道、鳩山法相が不快感--朝日「素粒子」(毎日jp. 06/20)】
とのnewsには、
恐ろしい事件を起こした宮崎死刑囚にも人権も人格もある。軽率な文章だ
と被執行者の人権に関して触れた点が挙げられており、上記報道と好対照を成している。
【朝日「死に神」報道に法相激怒 「死刑執行された方に対する侮辱」(MSN産経 06/20)】
との記事に及んでは、
「(死刑囚は)犯した犯罪、法の規定によって執行された。死に神に連れていかれたというのは違うと思う。(記事は)執行された方に対する侮辱だと思う」と強く抗議した。
等と被執行者全体への人権擁護を、明確に表している。
因みに、当の朝日新聞は本より【YOMIURI ONLINE】や【NIKKEI NET】の記事も含めて、
と朝日新聞の報道姿勢を批判した。
等と駄目押しはしておらず(NIKKEI NETの初回報道では見出しも含めて『全国紙』01語のみ。具体名を挙げなかったらしい、鳩山法相の意図を汲んだ物か)、
もったいぶってなくてすみません。
とはこの事だろうかと、独りごちたくなる。
MSN産経の見出しで強調されているが、良く読まないと『(死刑)執行された方(註:方々との報道もある)』が「被執行者たる死刑囚」とは判りにくい。
『刑を受けた方々』等、もう少し明快な言い方が欲しかったと思う。
素粒子の記事は、註記がないので「鳩山法相=冥府王にせよ長官にせよ疫病神の同輩たる死に神」と印象通りに解釈すべきであろう。
対する鳩山法相は、死刑囚のみならず刑務官に関して『「使い魔面して命や魂を奪う死に神風情」に準えた事になる』と擁護しても、職責上一応筋が通っている。
そもそも、死に神を否定的に扱えば鎌で刈られた人々は相対的に立場が向上する事になる。
被執行者に対しては侮辱には当たらず褒め殺しが関の山であり、反論の勢いにせよ殊更言及しない方が粗を増やさずに済んだだろう。
【死刑執行 鳩山流「自動化」ですか(北海道新聞06/18)】
との社説では、素粒子掲載直前でもあり
鳩山法相は昨年秋、「ベルトコンベヤーと言ってはいけないけど、(死刑確定の)順番通りなのか乱数表なのか分からないけど、自動的に客観的に(執行が)進む方法を考えてはどうか」と述べた。
法相が死刑執行命令書の署名の責任を負う苦しみを避けたいという理由だった。
と死刑自動化発言を再掲して容赦ない批判を浴びせている。
改めてこれらの発言を踏まえると、「今回の件はどちらもどちら」と裁定を下したくなる。
上記記事では、「05個の内01個のみ本物という絞首器械作動buttonsの押圧役たる05人?の刑務官」に関して、『「私眺める人、君押す人」とばかりに現場担当者の心境を無視している』といった批判的配慮は欠けている。
上司を適切に掣肘すれば、部下も慰められるという趣旨であろうか。
法相の深慮を以て刑務官も心身共に解放されるにせよ、死刑囚の逮捕から判決・拘置に至る迄に警察官や裁判官・精神鑑定医師等関係者を排除するとなると、日本のtechnologyを以てしても大変そうだ。
そもそも完全自動化systemを誰が構築するか、という大問題が聳えている(ギロチンを創造したFrance革命期の医師ジョセフ=ギヨタンにしてから、殺人医師として後世に名を残した感がある)。
死に神の性質に就いて触れたが、使い魔たる死に神は不吉たる死の象徴として忌避されている物の、冥府王なり長官なりは忌避されているとは限らない。
世界的に見て、北欧神話の様に「行き先が冥府にせよ天界にせよ支配者は死に神」としている例や、エジプト神話や仏教の様に長官が崇敬されている場合もあり、イスラム教ではアッラーの僕たる告死天使(アズラーイール)が死に神役を任されている。
日本神話に至っては創世神たるイザナミノミコトが死に神となっており、「絶対者の権能たる生死支配」「永遠への転生たる死」「生命輪廻の一場面」といった神話学的観点の一端と言える。
使い魔たる死に神(創作では屡々成果主義の職制や階級制が語られ、親しみ易さを醸成している)にしてからが、彼ら(彼女達?)が職場放棄すれば地上世界は亡霊やzombie、生者で溢れ返るであろう。
素粒子筆者にせよ鳩山法相にせよ、死に神軍団を「理不尽に人々を滅ぼす邪神一味」扱いこそすれ感謝崇敬の念が足りないと言える。
素粒子筆者はともあれ、鳩山法相は死刑制度廃止論者へ転換でもしない限り、社会秩序管理者としての自覚を問いたくなる。
気楽な身上の棋士たる私としては、羽生三冠将棋の神様への愛顧畏敬を欠かした事はないつもりだが、「自分の投了迄に相手が急逝します様に(微苦笑)」と祈願でもしない限り、玉将を詰ます将棋に於いて、死に神への祈願は無用かも知れない。
或いは、「全ての駒は現世で落命した武士亡者であり、総大将が死に神に導かれて冥府へ赴けば終了」と夢想すると、北欧神話の換骨奪胎じみていて面白いだろう(註:殆ど棋界sponsorsとしての各新聞社に言及していない趣旨上、敬称は省略させて頂いた)。
昨日-「○(勝利)」。本日-「(記入時未定)
」。
こよいは、ここまでにいたしとうございます(by【大井夫人@武田信玄】終話挨拶依り)。
追記
【朝日新聞「死に神」報道:「素粒子」に抗議1800件 「風刺コラム難しい」(毎日jp 06/22)】
死刑執行の件数をめぐり、朝日新聞夕刊1面のコラム「素粒子」(18日)が、鳩山邦夫法相を「死に神」と表現した問題で、朝日新聞社に約1800件の抗議や意見が寄せられていたことが分かった。
との追加記事があり、素粒子上でも筆者が批判を受けて殊勝さを表した様である。
約1,800件の内、何通が死に神の尊厳を擁護して人間に相応しい殊勝さをappealしていただろうか。
死に神のお世話になる前に、知りたい物だ。
『死刑執行人』と付いても永世は永世であり、福田康夫(やすお)総理でさえ首が危ぶまれる昨今に鑑みて瑞祥とする位の、witが欲しい気もする。
或いはご祖父同様の地位なり権力なり名誉なりを狙う身として飽き足らないという、ご壮図であろうか。
神話伝承や創作毎に、肉体死・霊魂離脱・霊魂の霊界移送の内いずれへ関与しているかはそれぞれにせよ、愛される死に神としてVIPを目指すなら、いずれか(全部?!)での失敗が近道となる。
死神はATOKでも転換出来ないが、巷ではfantasyを始めとして大半で用いられており、暗色のhoodがもたらす武骨さを良く表している。
隙間から見える物が荒涼とした骸骨にせよ、溌剌たる筋肉にせよ、ふくよかな柔肌にせよ。
« 第67期C01順位戦初戦報告 | トップページ | 曼珠沙華のかんばせ »
「パソコン・インターネット」カテゴリの記事
- “「盤上のシンデレラ ~小早川紗枝は四間に挑む~ 第10局”解説及び感想(2016.03.19)
- Twitterアカウント取得のお知らせ(2015.12.18)
- 第73期B級順位戦4回戦VS稲葉陽七段まとめ(予定)(2014.09.18)
- 第73期B級順位戦2回戦VS中田宏樹八段まとめ(2014.07.17)
- 第55期王位戦7番勝負第2局中継解説のお知らせ(2014.07.14)
「ニュース」カテゴリの記事
- 初秋の輝きを背に出陣(2009.09.14)
- 満開前に最終戦(2009.03.24)
- 新年に諸々告知(2009.01.07)
- おいてけぼりで出馬(2009.01.08)
- 怒濤の一年に終幕(2008.12.31)
「将棋界」カテゴリの記事
- “「盤上のシンデレラ ~小早川紗枝は四間に挑む~ 第10局”解説及び感想(2016.03.19)
- Twitterアカウント取得のお知らせ(2015.12.18)
- 第73期B級順位戦4回戦VS稲葉陽七段まとめ(予定)(2014.09.18)
- 第55期王位戦7番勝負第2局中継解説のお知らせ(2014.07.14)
- [天下一将棋会]HNの公開及び変更のお知らせ(2012.04.01)
コメント
この記事へのコメントは終了しました。
遠征後お疲れの中でしょうか、お返事ありがとうざいます。
「じっと我慢の子」とは意外でした。窪田六段より段位が低い方、順位戦クラスが下の方も、大盤解説をなさっていたかと思いますが……、「話題性」「新鮮さ」の面でも、窪田六段の解説を拝見してみたい方は、少なくはないのでは、と存じます。NHK杯での勇姿が焼き付いている方、貴ブログで披露されている、棋界稀な「文化系」(?)の表現力での大盤解説が、いかなるものとなるか、それに興味を抱く方は、きっと少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。もちろん、佐藤紳哉六段のかつらのごとき「ネタ」はなくても(私は開始時刻に間に合わずその場面を拝見できませんでしたが、無論それ以後のご解説も楽しかった)、です。「〜派」という「邪推」は特にしませんが、長年の実績のある毎日側に較べ、集客に不安のあったかもしれない朝日側に対して、連盟から何らかの配慮があったのでは、と、後から考えてふと推測したということがあっただけです。結果としては両社とも中盤以降は(?)満員御礼(?)となったようでしたが。
いずれにせよ、今期B2へと昇級を果たされれば、「棋力」「実績」の面でも「我慢」なされる必要もなくなるでしょうから、そのことも楽しみにして、今期の闘いを応援させていただきたいと存じます。
投稿: KS | 2008年6月28日 (土曜日) 午後 10時01分
先程関西遠征から帰って来ましたので、遅ればせ乍ら。
「神様」と呼ばれて得心する様では、謙譲の美徳を損なうとした物ですが(阪神fanとしても力強く断言します)、羽生三冠の場合は如何にもご本人は否定しておいでしょう。「神」と崇拝する若手棋士も、多い様です。
「本人は忌避しているが神称が流布している」旨の巷説が将棋界の知名度向上に寄与する点は、無視出来ないでしょう。
毎日さんと朝日さんでの人選偏差は余り考えておりませんでした。「毎日派か朝日派か」等と邪推するにせよ、女流棋士たる聞き手には無縁でしょう。
基本的に解説&聞き手の人選は、「棋力or話題性」「実績or新鮮さ」を斟酌している物と思われます。私の場合何れも半端な様ですので、資質が向上するか選考方法に大変動が生じる迄、じっと我慢の子を決め込んでいます。
一覧表の件は気が付きませんでした。朝日さんの04年後のお考えがどうあれ、現在は毎日さんに対して三舎を避いている一環と見なすべきかも知れません。
因みに素粒子欄に関しては、社の一大事業に絡む栄誉でさえ微妙な形で絡めた点を、気概として評価したく存じます。普段はともあれ・・・
投稿: 窪田義行 | 2008年6月28日 (土曜日) 午前 03時40分
羽生三冠は「神様」と呼ばれるのが大嫌いで、そう呼ばれると怒るという話をどこかで読んだ覚えがあります。結構有名な話かと思っていたのですが……。これに対して、「打撃の神様」こと某氏は怒るどころか平然と長老然として長きにわたりふんぞり返っておいでのようでしたが。
今回の共催名人戦開催にあたっては、やはり朝日新聞より毎日新聞を応援したい気分だったのですが、私が参加した大盤解説会はすべて朝日新聞本社開催でのものとなってしまいました。解説者と聞き手への期待度を私的に比較した結果です。どのような過程で解説・聞き手の方の選抜がなされたのか知りようもありませんが、偶然でしょうか。そもそも毎日新聞社のページには東西の将棋会館のみならず朝日新聞社側の解説・聞き手も含めた一覧表があり、懇切なその表を参照させていただいたのです。その逆からの表はなかったようです(?)。
投稿: KS | 2008年6月26日 (木曜日) 午後 12時17分