何時か捷ち組!?
『3月のライオン(Young Animal OHP』いよいよご好評のChapt.03を読了した(以後ネタバレにご注意あれ)。
02は図面すらなかったが、今回は棋戦制度に関する蘊蓄が語られている。
前回迄と違って[順位戦(名人戦)(共催公式)]という]正式な棋戦名が用いられている事と併せて、興味深い。
技術解説に関しては、松本一砂(いっさ)五段との対局が描かれた。松本五段はC級01組で26歳との設定で、零君には及ばないが若手hopeの一員と言える。
この世界の棋界は暑い熱い御仁が多い様だが、現実の棋界でも先輩は馴れ馴れしい位に後輩の面倒を見て来た物である。
作中ではMHK杯とされているが、[NHK杯TV将棋トーナメント予選(連盟公式)]のもじり。
NHK杯には前年度成績優秀者枠があり、零君なら該当しておかしくないが、この棋戦ではないらしく松本五段がとばっちりを食らっている。
盤面と手順は'00/12/05-06に行われた[第13期竜王戦第05局▲藤井猛竜王VS羽生善治五冠・挑戦者(勝)(連盟公式)]から引用されている。
零君(羽生挑戦者)の60手目△1六歩迄だが、松本五段(藤井竜王)の▲1八歩はproが嫌って止まない効かされ(反撃の含みがない辛抱。主導権を奪われる恐れや、不利に陥る懸念がある)に陥っている。松本五段は
どう、どうよ桐山きゅん?!
とハフハフしているが、零君は色々な意味で呆れ果てていたかも知れない。方や
攻撃的な棋風 -というか攻撃しかしてこない 猪か火の玉かってくらいの突っ込みをみせてくる
と戦前に分析しているが、フリッツ=ヨーゼフ=ビッテンフルト銀河帝国軍上級大将や、火の玉流の異名を取る[有吉道夫九段(連盟公式)]なら、後手玉の玉頭(03筋)を脅かしつつ端(01筋)を受ける攻防一如の▲2五銀を選んだだろう。
以下、玉頭を受けつつ端に加勢する△4四馬には、▲1四歩と香の効きを遮断しつつ▲1三桂の反撃を狙っていい勝負となる。
零君にも謬見があった訳だ。
57手目・6七の龍を▲6一龍と後手陣に突入させる局面なら(5五にいる角の効きから7七にいる銀を逃がす▲6八銀が正解だけに)、分析通りの局面だったろう。
監修者で第05局の大盤解説者を勤めた先崎学八段も
えっ、なんで銀とらせちゃうの。なんで▲6八銀と引かないのオッ。ぼ、ぼくには考えられない手です([近代将棋]'01年02月号P.18 04段目02-04行依り引用)
と述べられている。
尤も、先崎八段を含む控え室の検討陣は▲1八歩で未だ藤井竜王良しと観ていたが、62手目△7五歩が絶妙手で藤井竜王(松本五段)の自信迄打ち崩される事になる。
P.36(表紙から数えると数が合わないが、裏表紙方面からは些か恥ずかしい)03齣目の局面は△7五歩の効果を解説しているが、絵と台詞だけで判る方はama強豪並の実力だろう。
[将棋世界(連盟公式)]'01年02月号P.49 02段目01-09行目の解説には
「△7五歩で勝負あり」羽生の△7五歩が好手だった。▲(註:7五)同角は△7六馬と引いて角に当てながら次に△4九馬が生じる。
本局は△7五歩で勝負あったと言ってよいだろう。この一手のために藤井の角は(註:6六から3九迄の)守りに効かなくなり、加えて△3九銀の詰めろになる△6六馬と引く手が絶大な存在だ。
とある。
投了迄の推移は実戦と同様で、零君の鋭い気風が遺憾なく発揮された形と言える。
Chapt.02では技術解説なしの分、制度他背景が語られた感があるが、今回は技術面もてんこ盛りとなった。
戦い済んで、新家族の一員・あかり嬢が銀座のclubで接客係を勤めていると判明した。
衣装と髪型は銀座らしく上品な色香を醸し出しているにせよ、表情と化粧が普段と殆ど変わらない点が気になった。
「包容力抜群・癒し系hostess」として人気を勝ち得ているのだろうし、松本五段としてはいつも以上に和んだにせよ。
一方、零君が新家族抜きで安らぐ場所は未だに見付からないが、気長に待つとしたい。
現代社会の厳しい批判に晒されうる「未成年者と飲酒」が語られているが、「四段に昇段すれば一人前で飲酒OK」という現実棋界の風潮も、内側から改まりそうだ。
羽海野先生の作風は「特殊分野を借景として、一見賑やかな人間関係の背後に深く重い人間dramaを展開させる」様に伺っているが、今後益々「将棋&将棋界ならではの魅力」を追求して頂ければ、何よりに思う。
昨日-「△(指し掛け)」。午後から連盟04F桂の間でVS櫛田陽一六段。最近意識が改まったせいか、まあまあの筈の内容・結果乍ら満足出来なかった。以前から少し気になる事柄があった物の櫛田先生が言って下さり、気分刷新して指せた反面、汚れ役をお任せした気分に。
【不戦敗6回 2棋士に罰金百万円 - エンターテインメント(Yahoo!)】08/03付け会報で警告が発せられたが、効果なくかかる事態となり、この話題で持ち切りとなった。個人的には、一時期連盟(米長邦雄[くにお]会長以下旧理事会)の酷薄さを糾弾していた[LPSA]関係者の感想が気になる。表に出すには至らないだろうが(08/11 14:00upload)。
こよいは、ここまでにいたしとうございます(by大井夫人@武田信玄)
追記
あかり嬢の職業があの様だと、誌面全体の調和に配慮するなら(微苦笑)「[Shogi Club24]で3,000点代(神level)を叩き出す力戦派だが、普段は定跡の研究に勤しむ奨励会員」でも出て来るかも。
「僕は師匠にも『いいぞ』って言われるような正統派棋士になりたい・・・」。
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